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1章 文章はコミュニケーションツール (1)

1.1 論理的展開を考える

文章表現は、第三者が読んでも判るように道筋を立てて説得する文章を書く必要があります。 本節では、まず論理的展開はどのようなことを確認したうえで、第三者が読んでも判る説明文の書き方をしていきます。

1.1.1 論理とは道筋のとおった考え方

論理とは、物事を順序立てて説明したり、考えたりするための道筋です。 この筋は「みちすじ」、つまり論理が明確になっていると言い換えられます。 みちすじが明確でなければ、他者には一向に理解されません。

すべての結果や判断には、それに至る原因や理由があります。 さらに言えば、その原因や理由にもそれらが生じたもともとの原因や理由があったはずです。 説明文では、その結果に至る道筋を読み手が知っているところから始めて話を展開させます。 読み手が異なれば事前に知っている情報も異なるため、説明する内容や順番も異なってくるでしょう。

P.3の例文は、居眠り防止のシャープペンシルの開発について書かれています。 状況から予定されるデバイスの動作までを順序立てて説明しており、みちすじを立てて説明することの大切さを示しています。

1.1.2 主張を明確にするには

レポートや卒論で話をうまく伝える文章がなかなかできない理由は、以下の二つに集約されます。

  1. 文章表現スキルを学んでいない
  2. 文章に触れる機会が少なかった

文章表現のスキルを学べば、文章は書けるようになるということです。 主張することは何かをはっきりさせて、それを論理立てることを意識します。

文章表現のスキルは、レポートや卒論、さらには就職活動のエントリーシートといった文章にも利用できます。 文章活用して文章表現のスキルを習得して行きましょう。 文章表現スキルは一朝一夕で習得できるものではありませんですから、継続して書くこと、読むことが重要になってきます。

説得力のある文章を書くには、主張を明確化する意識を持って、以下のようなすじみちを立てるべきです。 P.6の例文では、具体的な例が示されています。

  1. 主張:文章で伝えたいこと
  2. 根拠:主張を指示する具体的な数字や事例、先行研究など
  3. 結論:主張は正しかった、とか仮説が立証された、など

主張→根拠→結論といった論理(みちすじ)の展開がなされて、自分の主張を明確にすることができ、初めて他者も理解できます。 根拠や客観的資料を提示し、理論を展開させて、明確な主張をすることが大切です。 根拠や客観的な資料がなければ、それは感想と言われても仕方がないでしょう。

1.2 わかりやすい説明文を書こう

一文一意という言葉があります。 これは一つの文には原則として一つの意味を持たせる、つまり複数の情報を持たせないということです。 論理的展開を踏まえ、主張したいことを一つずつはっきり述べることが大切です。

P.7の上の例文は、一文に複数の情報が入っており、一意とは言えません。 また、一文が非常に長く、流れを把握するのが簡単ではありません。

P.7の下の例文は、一つの文に一つの意味のみを持たせているので読みやすくなります。 こちらは、一文が短く、簡潔です。

1.2.1 説明する順序:全体から細部へ

文章には以下の二つのタイプがあります。

  1. 順序型:物事の発生した順に説明する
  2. 全体から細部型:全体を示してから、細部を一つ一つを説明する
  3. 細部から全体型:細部を一つ一つを説明してから、全体を説明する

順序型は、結論までたどり着くのが非常に長いためレポートには不向きです。 P.9の上の文章では、冒頭から最後まで読んで初めて全体の意味がわかります。 途中細かい説明もあり、道筋が一直線ではありません。 卒論や研究論文では、時系列で文章を書く必要はありません。 主張に沿うような流れで文章を作ることが優先です。

全体から細部型では、冒頭の二つの分で文章全体で言いたいこと、つまり結論が端的に書かれています。 それ以降の文章では、その結論に至った経緯を説明し、レポートの中味についてはさらに次の段落と構成を整理しています。

細部から全体型は、この本では述べられていませんが、やってしまいがちです。 順序型に似ていますが、結論までたどり着くのが非常に長いためレポートには不向きです。 自分で頑張ったところを特に強調したり、長く説明してしまいがちですが、その気持ちをグッと抑えることが大切です。 書いた文章は2,3日おいてから改めて読むのがおすすめです。

1.2.2 解決すべき問題は何か?

ここの部分に書かれている内容は、以前輪講した卒論の攻略本と同様ですので、簡単にいきたいと思います。

疑問を整理し、問題として認識するプロセスは以下の流れです。

  1. 情報を収集して現状を把握する
  2. 理想の姿を思い描く
  3. 解決すべき問題が何かを絞り込む

情報を収集して現状を正しく把握し、理想の姿を描きます。 現状と理想の姿との間に解決しなければならない事柄があり、それが何かを絞り込みます。

問題を解決するためのプロセスは以下の流れです。

  1. 問題の認識
  2. 課題の設定
  3. 解決案の企画・立案
  4. 解決案の設計・製作
  5. 解決案の評価・改良

本書では、問題と課題を以下のように区別しています。

  1. 問題:現在発生しているネガティブな事柄
  2. 課題:ネガティブな事柄を解決するためのポジティブな表現

1.2.3 目的と目標と手段の関係

ここの部分に書かれている内容は、以前輪講した卒論の攻略本と同様ですので、簡単にいきたいと思います。

ある物事についての説明文を書く時には、目的と手段がそれぞれ何になるかを意識することが重要です。 目的・目標・手段は以下の形となり、状況に応じて使い分けなければいけません。

  • 目的:実現しよう到達しようとして目指す事柄
  • 目標:そこまで行う成し遂げようとして設けた目当て
  • 手段:目的を遂げるのに必要な方法

1.2.4 その結果はどうなったのか

文章における思考の道筋、つまり論理の出発点からずれが生じているからです。 そうならないためにも、先に挙げた1.2.1項で示した全体から再度型の意識を持つことが必要です。 その上で目標は手段を明確にし、そのための根拠となる資料を集め、順序立てて論理を展開します。

はじめに設定した目標や目的と、最後の結論で違うことが述べられていることが散見されます。 文章の全体ができたら、この点もチェックしておきましょう。

1.3 「文」と「文章」

単語と単語を適切につなげて文節を構成し、文節と文節を適切に配置することができなければ、意味のある文を作ることはできません。言葉と言葉のつながりを意識しましょう。そして分を連ねて。文章を作り、論を展開します。

  • 文:一つのまとまった内容を表す一続きの言葉のことであり、一つの主語とそれに対応する述語を持つもの
  • 文章:文を連ねてまとまった内容を表したもの

1.3.3 句読点はどうつけるか

句読点をつけることに固定したルールはないので、ここではだいたいのルールを列挙します。

  1. 長い主語の後
  2. 重文や複文の区切り
  3. 接続詞や副詞の後
  4. 同様の関係(並列)にある単語の区切り
  5. 誤解を防ぐような位置
  6. 句点は括弧の後
  7. 箇条書きの場合は句点は使わない

1.3.4 段落を構成する

段落を構成する際に気をつけねばならないことは、一つの段落に一まとまりの話題のみを入れるということです。

一つの段落に複数の話題を入れると、何を伝えたいのか分かりにくくなってしまいます。 たとえば、文章の中で二つの事柄を説明したい場合は、1つの段落にまとめず、2つの段落にわけてそれぞれの段落で1つの話題を説明すべきです。

24ページの下の文章では、2つ目の段落から図を用いて測定方法の説明を始めています。 つまり、新たな話題の説明が始まるため、途中で段落を改める方が読み手にも話題が変わったことを伝えやすくなります。